法定相続情報証明制度について(3)
事務局の立場から、前回に引き続き、法定相続情報証明制度についてご紹介します。
前回は、相続人は、法定相続情報一覧図の写しを提出することにより、金融機関や登記所に対して順番に戸籍謄本の束を提出して、原本還付を受けるといった手続が不要となり、負担が軽減されることをご紹介しました。
ただし、法定相続情報証明制度については、いくつか注意点があります。
①法定相続人の情報だけが記載される
法定相続情報証明制度は、戸籍謄本等の記載に基づいて法定相続人を明らかにするものです。そのため、法定相続人ではあるものの、相続放棄や遺産分割協議の結果によって、相続しない人物も、法定相続情報一覧図には氏名等が記載されます。そのため、相続しない法定相続人が存在する場合には、法定相続情報一覧図の写しに、相続放棄申述受理証明書や遺産分割協議書を添付する必要があります。
②数次相続の場合の取扱い
数次相続とは、相続が2回以上重なってしまうことをいいます(ご参照:https://imazulaw.jp/?p=3709)。数次相続が発生した場合は、対象となる全ての被相続人の法定相続情報一覧図の作成が必要となります。例えば、相続人Xの祖父Aが亡くなった後、A名義の不動産の相続登記がなされない間に父Bが亡くなった場合、Xは、Aの法定相続情報一覧図及びBの法定相続情報一覧図をそれぞれ作成する必要があります。
③保存期間がある
法定相続情報一覧図の保存期間は5年間(申出日の翌年から起算)と規定されています(不動産登記規則28条の2第6号)
④利用に適さない場合がある
法定相続情報証明制度は、被相続人の預金の払戻しや相続登記を行う度に必要となる手続を簡略化し、負担を軽減するための制度です。そのため、被相続人が所有している預金口座や不動産が少ない場合は、法定相続情報証明制度を利用するメリットはあまりないと感じます。このような場合、相続人が金融機関や登記所に対して順番に戸籍謄本の束を提出して原本還付を受けても、それほどの負担とはならないためです。