除籍謄本が取得できない?
事務局の立場から、前回までの戸籍の種類に関連して、除籍謄本が取得できない例をご紹介します。
【保存期間切れ】
平成22年(2010年)6月1日に戸籍法施行規則が改正され、除籍及び改製原戸籍(戸籍の改製により閉鎖された古い戸籍のことをいいます。)の保存期間が150年となる前は、一部を除いて80年が保存期間とされていました。そうすると、単純計算をすれば、昭和4年(1929年)に除籍されていた場合、当該除籍謄本は80年後の平成21年(2009年)までが保存期間となり、法律上は廃棄されている可能性があります。廃棄されていた場合、地方自治体は、謄本の代わりに廃棄証明書を発行します。
ただし、地方自治体によっては、昭和4年以前の除籍又は改製原戸籍を廃棄せずに保管している場合もあり、謄本を請求すると問題なく取得できることもありますので、地方自治体に確認する必要があります。
【焼失等】
関東大震災や第二次世界大戦における空襲で戸籍が焼失してしまっていることがあります。例えば、東京都墨田区(当時本所区)では、予備の副本を含めて全ての戸籍正本が滅失してしまったため、再製できないものについては、焼失により交付できない旨の告知書が発行されます。
【除籍等の滅失における相続登記の取扱い】
除籍又は改製原戸籍が滅失していた場合、滅失した戸籍以降の身分関係をそれ以上追えないことになってしまいます。そこで、相続登記においては、「除籍等の滅失等により「除籍等の謄本を交付することができない」旨の市町村長の証明書が提供されていれば,相続登記をして差し支えない」(平成28年3月11日付法務省民二第219号法務省民事局長通達)との取扱いとなっています。
この点、上記通達があるまでは、「廃棄処分により除籍謄本が添付できない場合、「廃棄処分により除籍の謄本を交付できない」旨の市町村長の証明書及び「他に相続人はいない」旨の相続人全員の証明書(印鑑証明書付)を添付して代えることができる。」(昭和44年3月3日民甲第373号民事局長回答)との取扱いとなっていました。
したがって、現在は、「他に相続人はいない」旨の相続人全員の証明書(印鑑証明書付)を取得する必要がなくなり、当該証明書を取得するための手間と費用が不要となりました。また、当該証明書を取得できない結果、相続登記をすることができなくなる危険がなくなりました。
なお、平成23年3月11日に発生した東日本大震災では、津波により4つの自治体の戸籍正本が滅失しましたが、法務局に備えられていた副本をもとに再製作業が進められ、同年4月25日に戸籍の再製データの作成が完了しました。
法務省「東日本大震災により滅失した戸籍の再製データの作成完了について」
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00024.html