相続における戸籍謄本等の取得について(3)
事務局の立場から、前回に引き続き、相続における戸籍謄本及び除籍謄本の取得についてご紹介します。
前回は、被相続人に子がいるかを確定するためには被相続人の生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本等を取得する必要があることについてご紹介しました。
今回は、被相続人の相続人を確定するための戸籍謄本等の取得について、相続人が、配偶者(夫婦の一方からみた他方)及び兄弟姉妹となる例をご紹介します。
前提として、被相続人に子がいる場合、被相続人の生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本等を取得すれば足りるのは前回までにご説明したとおりです(第一順位)。
被相続人に子がいなくて直系尊属(「ちょっけいそんぞく」、父母、祖父母、曽祖父母…)が存命である場合は、被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本等を取得したうえで、直系尊属が存命であれば、直系尊属が相続人となります(第二順位)。なお、直系尊属のうち相続人となるのは、被相続人から最も親等(「しんとう」、被相続人との親族関係の近さ)の近い方となりますので、例えば、父母の一人が存命であれば、祖父母は存命であっても相続人にはなりません。
他方、被相続人に子も直系尊属もいない場合は、さらに、兄弟姉妹の有無を確認するために、戸籍謄本等を取得する必要があります(第三順位)。
【相続人が配偶者、妹及び甥の例】
上記の例では、相続人は、B、C、Dとなります。相続人が確定するための、戸籍謄本等を取得する過程を以下、ご紹介します。
①Aの生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本等を取得し、Aに妻Bがいること及び子がいないことが判明します(夫婦の一方からみた他方は常に相続人になりますので、この時点でBが相続人であることが確定します)。
②Aの父母の戸籍謄本等を取得し、Aの父母が亡くなっていることが判明します。
③同様に、Aの祖父母の戸籍謄本等を取得し、Aの祖父母が亡くなっていることを確認します(曽祖父母についても同様ですが、通常、それまでの戸籍謄本等の取得により、曽祖父母も亡くなっていることが判明していることが多いと思われます。また、例えば、存命であれば120歳以上の人物が存命であるかどうかを確認する必要はありません。亡くなっていることが確実であるためです。)。
④Aの兄弟姉妹を調査するために、Aの父母のそれぞれの生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本等を取得します(異父又は異母兄弟姉妹がいる可能性があるため、Aの父母の婚姻後の戸籍謄本等だけは足りません)。
⑤④によりAの兄弟姉妹が、亡くなったAの兄とCだけであることが判明します(この時点でCが相続人であることが確定します)。
⑥亡くなったAの兄の生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本等を取得し、子がDのみであることが判明します(この時点でDが相続人であることが確定し、全相続人が確定します)。
以上のとおり、被相続人に子も直系尊属もいない場合は、④の戸籍謄本等の取得が必要となり、さらに、兄弟姉妹が亡くなっていた場合は、⑥の戸籍謄本等まで取得することとなります。
上記の例は、相続関係を簡略化した例ですが、実際にはかなり複雑な事案もあり、漏れがないよう、迅速かつ確実に戸籍謄本等を取得することが必要です。