合同会社の設立について(4)
事務局の立場から、前回に引き続き、合同会社の設立についてご紹介します。
前回は合同会社の新規設立件数が増加し続けており、アメリカの著名な会社の日本法人において合同会社が選択されていることをご紹介しました。
合同会社は、一般的に、株式会社の新株発行等のような資金調達方法が会社法上規定されていないこと、株式市場に上場ができないこと(上場会社は全て会社法上の公開会社であり、公開会社は株式会社である必要があります(2条5号))、株式会社と比べて比較的新しい会社形態であることから対外的な信頼性が劣ること等がデメリットとして挙げられています。
それにもかかわらず、合同会社が選ばれ、増加している理由は、一般的に、次のように考えられています。
1 アメリカ合衆国の著名な会社が合同会社を選ぶ理由
①パススルー課税
一般的に、アメリカの税制上、日本法人の所得に関してパススルー課税(会社には課税されずその構成員の所得として課税する制度)を選択できることが一つの理由と考えられています(株式会社は、アメリカの税制上、パススルー課税の適用から除外されています。)。例えば、日本法人が赤字となった場合、当該赤字をアメリカの親会社の損失に計上することができるため、アメリカの親会社に対して課される税金を削減することが可能といわれている点などを挙げることができます。
なお、合同会社は、日本において法人税が課税されますので、日本における課税の点では、株式会社と異なりません。
②迅速な意思決定が可能であること
合同会社には、株式会社における株主総会、取締役会等の規定がありません。合同会社の経営に関する意思決定は、株主総会等の会社法上の手続を経ることなく行うことができますので、一般的に迅速な意思決定が可能といわれています(ただし、定款の変更には総社員の同意が必要です(法637条))。
合同会社における出資者はそのまま社員となり、法人も社員となることができます。したがって、出資者である親会社が合同会社の社員となることにより、親会社による迅速な意思決定が可能となります。
③配当を自由に決定できること
株式会社は、原則として、株主の持ち株比率に応じて剰余金(利益)の配当を行う必要があります(法454条3項)。他方、合同会社は、株式会社のような制限はなく、出資比率に応じて配当を行う必要はありません。定款に定めることにより、配当の割合を自由に決定することが可能です(法622条1項)。そのため、例えば、合同会社にとって重要な社員に多くの配当を与える等の柔軟な設定が可能となります。
(つづく)