外国会社が日本へ進出する際の商業登記について(2)
事務局の立場から、前回に引き続き、外国会社が日本へ進出する際の商業登記についてご紹介します。
②日本法人(外国会社の子会社)の設立
日本法人(外国会社の子会社)は、外国会社が日本において事業活動を継続的に行うために出資して設立した法人であり、法律上は日本法人として固有の法人格を有し、親会社である外国会社とは別個の法人となります。
したがって、前回ご紹介した支店(外国会社営業所)の設置とは異なり、「外国会社の登記」をするのではなく、一般的な会社の設立登記と同じように、設立登記の申請をすることになります。外国会社は、日本法人の設立にあたって、株式会社や合同会社といった法人形態から設立する法人を選択することになります。日本法人の設立登記をすれば、支店を設置した場合と同様に、登記をした日本法人の名義で銀行口座を開設することができるようになり、不動産の賃借をすることもできるようになります。
また、日本法人の事業活動から発生する債権債務は日本法人に帰属し、外国会社には直接帰属しません。
以上のとおり、外国会社が日本へ進出する際に必要な商業登記には、①支店(外国会社営業所)の設置、②日本法人(外国会社の子会社)の設立の2つの類型が考えられますが、②の日本法人の設立が選択されることが多いように感じております。その理由は様々なものが考えられますが、一般的には、
・支店の場合、日本国内での課税だけでなく、外国会社の所在している本国での課税も考慮しなければならない。
・日本法人は、支店よりも、日本国内の取引先から長期的な信用を得られやすい。
・仮に日本法人が倒産したとしても、親会社の外国会社は日本法人の債務を原則として負わない。
等の理由が考えられます。
なお、外国会社が日本で本格的な事業活動を行うにあたり、その準備のため、駐在員事務所を設置することがあります。駐在員事務所とは、一般的に、事業活動を行わず、市場調査や情報収集等を行う事務所を指します。駐在員事務所は、登記する必要がありませんが、一方で、支店の設置や日本法人の設立とは異なり、駐在員事務所名義で登記がなされていないことから、駐在員事務所名義で銀行口座を開設することや、不動産を賃借することはできません。そのため、駐在員事務所として活動するための銀行口座の開設や不動産の賃借は、駐在員事務所の代表者個人の名義等を使用する必要があります。
(つづく)