事務局から弁護士へ質問(20)-不動産に弁護士の関与は必要?(不動産取引その1)
ここ最近、民泊や地面師などが世間で話題になっています。弊所では、不動産関係のご依頼も多くいただいています。今回は、不動産に弁護士がどのように関与するのか聞いてみました。
事務局S 弁護士が不動産に関与する場合とは、どのような場合ですか?
今 津 ①不動産取引を行う場合、②滞納した賃料を回収したい場合、③建物や土地を返却してもらいたい場合、④賃料の改定を求めたり、求められたりする場合、⑤相続に関係する場合などを挙げることができます。
事務局S ①不動産取引を行う場合ということですが、売買契約や賃貸契約をする場合、不動産会社が、契約書などを全て準備してくれるのではないですか?
今 津 そうですね。不動産を売買したり、賃貸したりする場合、不動産会社が仲介を行い、宅地建物取引士が重要事項説明を行う場合が多いです。その場合、不動産会社が、定型的な売買契約書を準備することとなり、売主や買主が、自ら売買契約を準備したり、弁護士に依頼して、契約書を作成する必要はない場合がほとんどです。
事務局S では、どのような場合に、弁護士が、不動産の取引に関与することになりますか?
今 津 まず、取引の対象となる不動産が、特殊な事情を抱えている場合には、弁護士に依頼したほうが良いです。
事務局S 特殊な事情とはどのような場合ですか。
今 津 例えばですが、土地に擁壁(ようへき)が存在したり、工場の跡地であり土地に汚染が存在することが疑われたり、相続の争いに関連して土地が売り出されたりする場合などです。
事務局S そのような場合、なぜ弁護士が関与したほうが良いのですか?
今 津 そういった特殊な事情が存在する場合、後にトラブルとなる可能性があるためです。例えば、土地を売却した後に、長雨が降り、擁壁(ようへき)が崩れるといったことが考えられます。擁壁(ようへき)が崩れると、下の土地への影響は大きく、被害が大きくなりがちです。また、土地の擁壁(ようへき)は設置するために多額の費用が必要です。その費用をめぐって、土地の売主と買主に、トラブルが生じる可能性があります。
事務局S なるほど。
今 津 土地に汚染が発見された場合も、同じようなことが起こりますね。また、相続人間に争いがあるような場合、一部の相続人が相続財産である土地を売却しようとしても、一部の相続人が最終的に印鑑を捺さなければ、結局は、不動産を購入できなくなります。そうなれば、当然のことですが、買主が不動産を購入するために費やしてきた時間も労力も費用も無駄になってしまいます。
事務局S そうなっては大変ですから、後にトラブルが生じないように、契約書をしっかり作成したり、確認すべきことを確認しておくということですね。ですが、不動産会社もそういった場合に備えて、トラブルが生じないように注意されるのではないですか?
今 津 そうですね。不動産会社は、売主と買主にトラブルが発生すると困りますから、細心の注意を払っておられると思います。ですが、「餅は餅屋」という言葉があるように、不動産取引に際して、トラブルが発生しないようにするために、法律の専門家である弁護士に依頼されることが多いです。(次回に続きます。)