事務局から弁護士への質問(29)-弁護士が相続で不動産に関わる?(遺言その3)
前回は、自筆証書遺言について、有効となるための法律上の要件が定められており、その要件を満たさない場合には、無効となってしまうことを聞きました。
事務局S 例えば、日付の記載を間違った場合、訂正することはできないのですか?
今 津 できますが、訂正についても、民法に定められた要件を満たす必要があります。具体的には、遺言者が、訂正する場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければなりません。
事務局S 分かりにくいですね。
今 津 そうですよね。日付欄が誤っていた場合、訂正箇所を二重線で消し、正しく記載するとともに、変更した箇所に押印し、かつ欄外に、例えば「日付欄の「平成29年」を「平成30年」と訂正した。」と記載し、かつ署名するといった訂正を行う必要があります。
事務局S そんなことまで決まっているのですか!
今 津 かなり細かいですね。
事務局S では、例えば、遺言者が、ある相続人に相続させると記載した不動産の住所が間違っていた場合、遺言は無効になってしまうのですか?
今 津 遺言で、誰かに相続させようとしている不動産の住所が間違っていても、遺言は無効とはなりません。
事務局S でも、遺言は、日付が間違っていても無効になるのですよね。
今 津 不思議に思えますよね。遺言は、遺言者の意思を尊重するものですから、遺言者はいつでも遺言を書き換えることができます。また、遺言が複数存在する場合には、最も新しく(最後に)成立した遺言が優先します。
事務局S はい。
今 津 そのため、遺言にとって、成立時期は極めて重要な要素であり、日付は遺言の成立の時期を明確にするために必要とされ、真実の作成日付を記載しなければならないものとされています。その一方で、相続させようとする、ある不動産の住所が間違っている場合、不動産を特定できなければその部分のみの記載が誤っているということで、遺言全体を無効とする必要はありません。
事務局S なるほど。日付を自己流で訂正してしまおうと考える方も多いと思います。日付の間違いだけで、遺言が無効になってしまうとは驚きました!専門家である弁護士に相談の上、作成するのが安心ですね。(次回に続きます。)