事務局から弁護士への質問(25)-不動産に弁護士の関与は必要?(賃料改定その1)
前回までは、②滞納した賃料を回収したい場合や、③建物や土地を返却してもらいたい場合について聞きました。訴え提起前の和解など、いろいろな制度があることを知りました。今回は、④賃料改定について聞きたいと思います。
事務局S ④貸主や借主が、相手に対して、一方的に賃料の改定を求めたり、求められたりする場合があるのですか!?
今 津 できる場合があります(借地借家法11条、32条)。
事務局S 契約の当事者は、お互いに賃料も合意しているわけですよね。一方的に改定することができてしまったら契約書の意味が無さそうですが、そのようなことはないのですか。
今 津 そう考えるのが通常ですよね。
事務局S 例えば、私が、マンションの部屋を人に貸していて、そのマンションの賃料が低くなってきたなと感じたら、賃料を上げるように求めることができるということですか?
今 津 その可能性がないわけではありません。ですが、賃料の増減請求は、建物賃貸借契約や借地契約が長期間継続するもので、時の経過とともに事情が変化し、賃料が不相当となってしまうことを是正しようとする制度です。ですから、例えば、貸し始めて2、3年が経って、「最近、少し物価も上がってきたようだし、賃料を上げてもらおうか」というように簡単にできるものではありません。
事務局S そうなのですね。
今 津 「事務局から弁護士へ質問(22)-不動産に弁護士の関与は必要?(不動産取引その3)」で少し話題にのぼったとおり、借主は、賃借権という強い権利を有しています。特に、土地の賃貸借の場合には、借地権が土地の価値の半分を超える価値を有していることも少なくありません。ですから、貸主が、借主に対して、「土地や建物を返してください」と言っても、容易に返してもらえません。
反対に、借主としても、借りている土地上に建物を所有していたり、借りている土地や建物に対して強い利害関係を有しており、簡単に「返します」というわけにもいきません。
そこで、法は、貸主にも借主にも、賃料の増減請求を認めたと言えます。
事務局S なるほど。借主が、賃借権という強い権利を有していることや、建物賃貸借契約や借地契約が長期間継続することが関係しているのですね。
(次回へ続きます。)