事務局から弁護士へ質問(7)-従業員とのトラブル予防策は?
前回は、企業と株主のトラブル予防対策について聞きました。企業と株主との間のトラブルとは、なかなか想像ができませんでしたが、企業経営は株主の委任の上で成り立っているからこそ、取締役が勝手なことはできないこと、また企業が株主のために収益を上げることを最終的な目的として、より良いサービスを提供しようと努力することを通じ、私たち消費者の生活を豊かにしてくれているのだと感じました。今回は、会社従業員とのトラブル予防策について聞いてみました。
事務局S 会社従業員とのトラブル解決、これはとても興味があります。
従業員とのトラブルを防ぐために、予防策はどのようなものがありますか。
今 津 企業と従業員の間の労働契約も私人間の契約ですから、当事者の合意により自由に内容を決めてよいかというと、そういうわけではなく、通常の私人間の契約よりも強い制約があります。
事務局S そもそも通常の契約でも、制約はあるのですか?
今 津 あります。例えば、1年間、AさんがBさんの妾(めかけ)になるという契約を、AさんとBさんが締結したとします。このような契約は、Aさんが心から同意していたとしても、公序良俗に反し無効です。
事務局S そういった契約は無効なのですね。
今 津 はい。こういった特殊な事情がなければ、通常の契約関係では、私人間ではどのような契約をするかは当事者の自由であり、当事者が同意していれば、基本的に契約は有効となります。
事務局S なるほど。労働関係では、その自由がより制約されているということですか?
今 津 はい。例えば、労働契約において、「有給休暇はありません」と合意し、労働者が心から同意していたとしても、そのような合意は無効です。企業と従業員の関係において、企業は、従業員を保護するための労働基準法等の法令を守る必要があります。常時10人以上の労働者を使用する使用者が、就業規則を定めなければならないことも、そういったルールの一つです。就業規則に規定しなければならないことも、法令に詳細に定められています。
事務局S なるほど。その規定しなければならないことが就業規則に定められているか確認するのも弁護士が行う確認業務の1つなのですね。
今 津 はい。そういったことも弁護士の業務の一つです。一方で、就業規則は、一方的に従業員に有利なものというわけではありません。就業規則は、従業員が従うべきルールでもあります。そこで、企業の実情に応じて、法律が認める範囲において、就業規則において、企業にとって必要となる、従業員が従うべきルールを定めることも必要です。弁護士は、このような観点から、就業規則を作成したり、修正したりします。
事務局S 色々なところでバランスをとっているのですね。また、最近は、パワハラ、セクハラ、残業の問題などが、よく報道されていますね。
今 津 そうですね。そういった問題を報道されることによって企業が受ける損害は大きいですね。
事務局S 報道されないようにする方法はあるのですか?
今 津 企業内でそのような問題が発生しないよう努力すると共に、内部通報窓口を設置することも、一つの方法と思います。有効な内部通報窓口が設置されていれば、従業員が報道機関などに問題を知らせる前に、企業が内部通報窓口において問題点を把握し、問題を解決することができる場合があります。
事務局S 法律事務所が、企業の内部通報窓口となることがありますよね。
今 津 はい。当事務所も、上場企業を含む、複数の企業の内部通報窓口として指定して頂いております。企業の皆様には、ぜひ内部通報窓口として、法律事務所を活用して頂ければと思います。
事務局S そのことも聞きたいと思っていましたので、別の機会に聞いてみたいと思います!
今 津 はい。(次回に続きます。)