事務局から弁護士へ質問(3)-契約書は修正できる?
前回は、さまざまな契約があること、そして契約の重要性について聞きました。今回は、当所においても大きな割合を占める業務の1つ「契約書」の作成・修正について聞いてみました。
事務局S 契約書は一から作成するのですか?
今 津 お客様のご依頼の内容によります。当所のお客様から取引先へ提示する契約書の場合は、一から作成する場合が多いです。取引先から当所のお客様へ提示された契約書の場合は、契約書を修正することになります。
事務局S え!取引先からお客様へ提示された場合も、修正することはできるのですか?取引先とは、長く付き合わなければいけないし、信頼もしているし、契約書は確認せずに締結すると思っていました。
今 津 提案された契約書をそのまま締結すると、思いもよらないリスクを負っていることがあり、問題が発生した時に過大な責任を負わされることもあります。提案された契約書は、内容を確認して、必要な部分は修正するよう求めるべきです。受け入れてくれないだろうと思っていても、取引先は、案外、合理的な修正は受け入れてくれるものです。法律事務所は、契約書を精査して、お客様にとって必要な権利を定めているか、過大なリスクを負っていないかなどを確認し、お客様に対して必要な修正案を提案します。
事務局S そうなんですね!…ですが、そうはいっても、全く交渉できないような場合もあるのではないですか?
今 津 そういう場合もあります。一つは、相手が定型的な約款を用いて不特定多数と画一的な契約を締結する場合です。
事務局S 約款。見たことはありますが、実際には読んだことはありません。常に約款がついているわけではないですよね?
今 津 そうですね。例えば、預金規定、保険約款、ソフトウェアの使用約款、航空運送約款などがあります。
事務局S 前職では航空会社に勤務していましたが、確かに、運送約款に基づいて、お客様にご搭乗頂いていました。持ち物のルールについて、なかなかご納得いただけないお客様に約款を見て頂いてご理解をいただいた記憶があります。
今 津 おー、そうでしたか。搭乗客が、約款の内容を変えてくださいとお願いしても、航空会社が応じることは難しいですよね。
事務局S 確かに、お一人お一人の要望に応じて約款を修正していたら、大変なことになりますね。
今 津 もう一つは、相手の力が圧倒的に強い場合です。相手はこちらと契約する必要はなく、こちらはどうしても相手と契約したいという場合、相手は契約の修正に応じる必要がありません。そのような場合、相手が一方的に決めた内容の契約の締結を強く求めてくる場合があります。このように、事実上、交渉が難しい場合はありますね。
事務局S 悔しいですが、仕方ないですね。
今 津 このような力の不均衡を是正する法律として、下請法などがありますが、それはまたの機会にしましょう。
事務局S そうなんですね!法律はよくできているんですね。
今 津 交渉できない場合の話が長くなりましたが、実際は、契約の内容について全く交渉できないことは例外的です。通常は、相手は交渉に応じますので、提案された契約書は、内容を確認して、必要な部分は修正するよう求めるべきです。(次回に続きます。)