種類株式について(2)
事務局の立場から、前回に引き続き、種類株式についてご紹介します。
③株主総会において議決権を行使することができる事項(108条1項3号、同条2項3号)
株式会社は、株主総会において議決権を行使することができる事項について、内容の異なる定めをした株式(議決制限株式)を発行することができます。
議決制限株式を発行する場合、株式会社は、(ア)株主総会において議決権を行使することができる事項、及び(イ)当該種類の株式につき議決権の行使の条件を定めるときはその条件、を定款で定める必要があります。
株式会社の支配を維持しながら株式発行による資金調達を行う必要がある場合に、優先株式を無議決権株式として設計することがあります(宍戸善一他「会社法実務解説第1版」102頁)。
④譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること(108条1項4号、同条2項4号)
株式会社は、譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要する点において、他と内容の異なる定めをした株式(譲渡制限株式)を発行することができます。
譲渡制限株式を発行する場合、株式会社は、(ア)株式を譲渡により取得することについて株式会社の承認を要する旨、及び(イ)一定の場合においては株式会社が承認をしたものとみなすときは、その旨及び当該一定の場合、を定款で定める必要があります。
一部の種類の株式についてのみ譲渡制限を付すことや、譲渡制限の有無の点のみが異なる種類株式を設けることも可能です(江頭憲治郎「株式会社法第7版」149頁)。
いわゆる非公開会社は、その発行する全部に譲渡制限を付している株式会社のことをいいます(2条5号反対解釈)。
例えば東京証券取引所といった、証券取引所において株式が公開されている会社は、上場会社と呼ばれます。取引所での株の売買において、そのたびに発行会社の承認を要するといったことがないことからも分かるように、上場会社は必ず公開会社です。
一方で、上場会社ではない会社のほとんどは、非公開会社であり、全ての発行株式が譲渡制限株式です。公開会社でありながら、株式を上場していない場合もありますが、上場準備中の会社が、まだ上場していない段階で公開会社となるといった例外的な場合に限られます。
⑤当該種類の株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること(108条1項5号、同条2項5号)
株式会社は、株主が会社に対しその株式の取得を請求することができる点において、他と内容の異なる定めをした株式(取得請求権付株式)を発行することができます。
取得請求権付株式を発行する場合、株式会社は、(ア)株主が当該株式会社に対し当該株主が有する株式を取得することを請求できる旨、(イ)株式会社が(ア)の株式一株を取得するのと引換えに当該株主に対して当該株式会社の他の株式を交付するときは、当該他の株式の種類及び種類ごとの数又はその算定方法、(ウ)株主が会社に対し取得を請求することができる期間、を定款に定める必要があります。
実務上、(a)普通株式を対価とする取得請求権と、(b)現金を対価とする取得請求権が比較的よく用いられています。(b)については、IPO(新規上場)を目指している非公開会社が一定の時期までにIPOを実現することを目指している旨を説明して資金を募るような場合に、当該時期までにIPOを実現できなかったことを行使条件とする現金対価の取得請求権を付した種類株式を発行することがあります。(前掲「会社法実務解説第1版」105頁)。
(つづく)