商業登記簿を取得できない会社がある?
会社を相手に訴えを提起したり、会社を相手に仮差押の申立てを行ったりする場合、訴えを提起する側(「原告」といいます。)や、仮差押の申立てを行う側(「債権者」といいます。)は、裁判所に提出するために、相手方の会社(訴訟の場合は「被告」、仮差押えの場合は「債務者」といいます。)の商業登記簿を取得する必要があります。商業登記簿には、会社の正式名称(商号)、本店所在地、代表者名及び代表者の住所、取締役の名前などが記載されており、裁判所は、被告又は債務者として指定されている会社が実在しているのか、その会社の住所が正しいか、会社の代表者として原告又は債権者から指定されている者が本当に代表者かなどを確認します。
そこで、原告又は債権者の代理人として、相手方の会社の商業登記簿を取得すると、本店が、原告又は債権者が把握している住所とは異なる住所にあったり、代表者が、当方が把握している者とは違う者であったりすることがあります。また、商業登記簿の変更手続中で、商業登記簿を取得できないこともあります。
訴訟については、訴え提起から終了まで、争いのない場合であっても4、5か月程度、争いがある場合には約1年以上は必要となります。そのため、訴え提起を1日、2日急いでも、結論に大きな影響がない場合が多いです。
これに対して、仮差押の場合には、申立てが、1日、2日遅れたために、債務者が銀行から預金を引き出してしまったり、第三債務者が債務者に弁済したりして、財産が散逸してしまうことがありますので、急を要します。しかし、仮差押の申立てを行うためには、相手方の会社(債務者)の商業登記簿を取得しなければなりません。急を要する時に、商業登記の変更手続中であれば、適時に商業登記簿を取得することができず、結果として、財産が散逸してしまい、仮差押命令を得ることができたものの、財産の仮差押には失敗する可能性があります。そうならないために、商業登記の変更手続中には、法務局の担当者へ電話をして、早く変更を完了するようお願いすることもあります。