ワンマン社長の解任劇
取締役会を設置しており、5名の取締役(A、B、C、D及びE)がいる非公開の株式会社があり、当該会社の取締役C、D及びEは、代表取締役Aが会社に対する不正行為を行っているため、代表取締役Aを解任すべきと考えています。ところが、代表取締役Aを含む、議決権の過半数を有する株主は、Aを支持しています。C、D及びEは、どのような手段をとることができるでしょうか。
取締役C、D及びEの3名は、会社の取締役数(5名)の過半数を超えていますので、取締役会を開催して、Aの代表者としての地位を解職することができます(会社法362条2項3号。なお、取締役会では、取締役としての地位まで解任できるわけではありません)。しかし、議決権の過半数を有する株主が、Aを支持していますので、仮に、C、D及びEが、Aを解職すれば、次回の株主総会において、C、D及びEが取締役を解任され、新たに選任された取締役が、Aを再び代表取締役として選定することになるでしょう。
そこで、①C、D及びEは、Aの代表取締役としての地位を解職したうえで、自分たちが次回株主総会において解任されず、かつ、Aが取締役から解任されるよう、引き続き、株主を説得することになります。②その説得が成功せずに、次回株主総会において、Aを取締役から解任する旨の議案が否決された場合、C、DまたはEが、議決権の3%以上または発行済株式総数の3%以上を有するのであれば、Aに不正の行為等があったとして、一定の場合には、Aを取締役から解任するよう訴えを提起することができます(会社法854条)。
まず、①の場合ですが、Aは、一時的に、代表者としての地位を解職されますが、C、D及びEが、株主の説得に成功しなければ、次の株主総会において、C、D及びEは、取締役を解任され、かつ、新たに選任された取締役を通じて、Aが、代表取締役として復活する可能性が高いです。
次に、②の場合ですが、訴訟は、それなりに時間がかかることも珍しくありませんが、その間にAの取締役の任期が満了し、株主総会で再任された場合、改めて株主の信任を得たものとして、特別の事情がない限り、当該訴訟は訴えの利益を失い却下されることになります。また、仮に、訴訟により、Aが取締役から解任されても、次の株主総会において、Aが取締役として選任されれば、その選任は有効ですので、結局は、Aが取締役として復活することになります。議決権の過半数を有する株主がAを支持しているのであれば、Aを代表取締役として選定する者を新たな取締役として選任することが可能ですから、結局は、Aが代表取締役として復活する可能性が高いと言えます。
以上の通り、結局、少数株主の支持しか得ることができなかったC、D及びEが、議決権の過半数を有する株主の強い支持を得ている代表取締役Aを会社から追いだそうとしても、その目的を達成することは、例外的な場合を除いて困難と言えます。