事務局から弁護士へ質問(23)-不動産に弁護士の関与は必要?(滞納賃料と立退き1)
前回までは、弁護士が不動産に関与する場合として、①不動産取引を行う際のこと、を聞いてみました。今回は、②滞納した賃料を回収したい場合や③建物や土地を返却してもらいたい場合について、弁護士に聞いてみました。
事務局S 滞納した賃料を回収したい場合も弁護士へ依頼があるということですが、そのような家賃を滞納されていて貸主がトラブルを抱えている人(大家さん)は少なくないような気がします。大家さんが困っていることに変わりはないですが、程度問題がありそうで依頼のタイミングが難しそうです。(例えば、1か月の滞納の人がいれば、1年の滞納の人もいるなど。)
今 津 そうですね。特殊な事情があれば別ですが、1か月分の家賃を滞納したからといって、直ちに弁護士に依頼をして賃料を回収をしようとすることは、それほどはないと思います。どの程度の家賃を滞納したら弁護士に依頼すべきかについては、滞納金額、保証人の信用力、立退きを求めるかどうか、といったことにもよりますので、一概には言えません。
事務局S 金額が高くなれば高くなるほど、弁護士に依頼すべきということですか?
今 津 一般論としてはそう言えると思います。また、建物や土地の立退きを求める場合も、弁護士に依頼したほうが良い場合が多いです。
事務局S なぜですか?
今 津 建物や土地からの立退きは、立退く側にも大きな負担が生じることになります。例えば、店舗であればこれまでに獲得した顧客を失ってしまったり、住宅であれば引越ししなければならなくなったり、また建物を取壊す必要があったり、ということになります。そのため、短期間の賃料を滞納しただけでは賃貸借契約の解除が認められないこともあります。また、借りている側が、一度は立退くことを約束しても、後になって気持ちが変わってしまったり、色々な事情により立退かなくなることもあります。そこで、借りている側が立退くことを約束すれば、貸主としては、状況に応じて訴え提起前の和解等の方法により、現実的に立退きを実現することができる状態にしておくといったことも検討すべきです。
事務局S 反対に、立退きを求められた場合にも、弁護士へ依頼すべきですか?
今 津 そうですね。「事務局から弁護士へ質問(22)-不動産に弁護士の関与は必要?(不動産取引その3)」にも紹介しましたが、特に土地の賃借権には財産的な価値があります。また、建物の賃借権についても、賃貸借契約を解除できる状況でなければ、立退く必要はないということになりますし、立退く側にも大きな負担が生じることになります。そこで、立退く側は、貸主に対して経済的な補償を求めることができる場合があります。
事務局S そうなのですね!立退く側(借り主)も、貸主との契約内容をしっかりと把握していないと思わぬトラブルに巻き込まれてしまいますね。(次回に続きます。)