事務局から弁護士へ質問(17)-企業の公平って?
前回は企業の法務部について聞きました。法務部のない企業様には、法務部の機能として、外部の弁護士への委託を考えるきっかけになれば嬉しいです。今回は、企業の公平について聞いてみました。
事務局S 顧問弁護士がいるA社と、顧問弁護士がいないB社で契約を交わすとします。顧問弁護士がついているA社に圧倒的に有利な内容の契約書となっていることが考えられますが、そのような場合でも契約は成立してしまうのですか。
今 津 A社とB社が、契約を締結することに合意しているのであれば、もちろん契約は成立します。
事務局S 契約締結後、B社が、A社に圧倒的に有利な契約となっていることに気付いた場合、B社はその契約内容を泣く泣く飲み込むしか方法はないのですか。
今 津 契約の内容によりますが、相手方が契約に違反していないのに、もう一方の当事者が契約を解除したり、なかったことにしたりすることは、通常は、困難です。
事務局S うーん。B社が、圧倒的に不利な契約に拘束されるのは、不公平ではないですか?
今 津 不公平ではありません。A社が、費用をかけて自社に有利な契約を作成し、B社は、費用をかけずにそれを受け入れたのですから、それぞれが自由な意思で行ったことの結果です。
事務局S そうなんですね。
今 津 民事裁判にも、似たようなところがあります。A社とB社が訴訟をせざるを得なくなった場合に、A社は弁護士に依頼しましたが、B社は弁護士に依頼しませんでした。その結果としてB社が訴訟に負けたとします。B社は、弁護士に依頼しないのは自由ですが、その結果に責任を負います。
事務局S 自分の身は自分で守らなければならないということですね。では、契約を締結する場面に戻って、B社はどうすべきだったのでしょうか。
今 津 B社としても、弁護士に依頼して契約書の内容をしっかりと検討し、A社に対して伝えるべきことは伝え、対等な立場で交渉するべきと思います。
事務局S A社はB社と締結する必要はなく、一方で、B社がどうしてもA社と契約を締結したいという場合はどうですか。
今 津 その場合、B社の立場が弱くなり、どうしても契約がB社に不利な内容となってしまうことは否定できません。
事務局S A社とB社の力関係ですね。
今 津 そうです。その場合でも、B社は、いったんは交渉し、A社が受け入れられる部分と、そうでない部分を把握し、その契約がどのようなリスクを持っているのかという点を把握するべきです。その上で、B社にとって、負うことができるリスクかどうかを判断し、可能であれば契約を締結し、そうでなければ契約の締結をあきらめざるを得ないということになります。そういった、リスクの判断についても、弁護士にご相談頂ければと思います。
事務局S 日常的な常識では、なかなか判断できなさそうですね。
今 津 簡単ではないと思います。法令や裁判例を前提とした専門的な判断が必要である場合が多いです。(次回に続きます。)