事務局から弁護士へ質問(5)-2.秘密保持契約って何?
事務局S このブログをきっかけに、契約の見直しをしていただけるといいですね!少し話は変わりますが、よく秘密保持契約という契約を耳にするのですが、どのような時に契約しますか?私個人ですが、前職でも定期的に署名した覚えがありますし、当事務所入所時にも提出しました。
今 津 秘密保持契約は、情報を秘密として保持し、第三者に開示したり、漏洩したりしてはならないという契約です。NDAといったりします。Non-disclosure agreementの略です。例えば、企業であるA社が、B社から、B社の子会社であるb´社(の株式)を購入しようとしているとします。b´社は、社外に開示すべきではない有益な情報を持っています。一方で、A社は、b´社を購入するかどうかを決めるために、b´社の内情を知る必要があります。そのような時に、A社へ、b´社の情報を開示しますが、b´社を購入するかどうかを決めるためだけにこの情報を使ってくださいね、といった約束が必要となります。A社が、b´社を購入しないと決めたのに、b´社の重要な情報をA社の事業のために使用し、競争相手となってしまったり、第三者に漏洩してしまったりするのであれば、B社もb´社も、怖くて情報を開示できません。
事務局S なるほど。確かに、前職でも、今の事務所でも、その場にいなければ知りえない情報を預かって仕事をさせていただいています。あってはならないことですが、私自身のためにその情報を使ったり、万が一情報が外部に漏れてしまったりしては、企業や事務所全体の信頼にも関わります。秘密を開示すること、されることは、とても責任のあることなのですね。この秘密保持契約を締結する場合、どのようなことを規定する必要があるのですか。
今 津 以下のような内容を規定することが一般的です。
① 秘密情報の範囲(開示する際に「秘密」であることの指定が必要かどうか、何が秘密情報で何が秘密情報ではないかの区別)
② 開示を受けた者が、どのような目的で秘密情報を使用できるか(通常は秘密保持契約を締結する目的・対象となる取引に限定されます)
③ 開示を受けた者が、どのような範囲の第三者(例えば、親会社、兄弟会社、資金調達先、コンサルタント、会計士、税理士、弁護士、司法書士、証券関係)に秘密情報を開示できるか
④ 適用除外又は例外(既に所持している情報や法令に基づく開示など)
⑤ 開示をする際に事前に通知や承諾が必要か
⑥ ②の目的が終了した又は秘密保持契約が終了した場合に、秘密情報を、返還するか、破棄するか、その選択権がどちらにあるか、廃棄の方法など
⑦ 開示を受けた者の違反、第三者に違反があった場合の責任
⑧ 期間、期間終了後の義務
⑨ 万が一紛争が発生した場合、どこの裁判所で審理するかなど、紛争解決の手段
事務局S なかなかボリュームがありますね。どこの裁判所を使うかまで決めておくとは、前回も聞きましたように、先のことを想像しながら契約書を作成しているのですね。(次回に続きます。)