事務局から弁護士へ質問(11)-役員は責任を減免してもらえる?
前回は、取締役が株主から責任を追及される場合について聞きました。取締役は、一体どのような業務をしているのだろうという疑問がありましたが、企業において注意義務や忠実義務を負っていることを知りました。前職では、年に数回、役員の方が現場(空港)に来ていたことを思い出し、このような活動も、注意義務や忠実義務の役割の1つなのだなと思いました。今回は、役員等の会社に対する責任の減免について聞いてみました。
事務局S 会社の損害となると、取締役個人で責任を負うことは、とても困難ですよね。今後、取締役を希望しない人が増えてしまったら大変ですよね。とても荷が重すぎます。
今 津 実際にそのような議論があり、会社法には、取締役や監査役など、株式会社の役員の責任を限定するための制度があります。
事務局S そうなのですね。
今 津 株式会社に対する役員の責任を減免する制度は、減免する責任の範囲によって段階的に設けられています。
事務局S 段階的、ですか。
今 津 はい。減免する責任の範囲が大きければ減免の条件が厳しくなり、減免する責任の範囲が小さければ減免の条件が緩やかになります。
事務局S なるほど。
今 津 まず、総株主の同意があれば、原則として、株式会社に対する役員の責任を全て免除することができます。
事務局S 株主は株式会社の実質的な所有者だからですかね。
今 津 そうです。次に、株主総会の特別決議により、原則として、役員の故意または重過失を除く任務懈怠責任を、一定の範囲で免除することができます。
事務局S 「故意」とか「重過失」とは、いったい何ですか。
今 津 「故意」は「知りながらあえて」と言い換えることができ、「重過失」は「注意を著しく欠いて」と言い換えることができます。
事務局S 役員が「知りながらあえて」した行為や「注意を著しく欠いて」した行為により会社が損害を被った場合の責任は、免除されないということですか。
今 津 そうです。会社の損害は、会社の実質的な所有者である株主の損害とも言えます。役員に故意や重過失がある場合は、総株主の同意がなければ、言い換えれば、免除に賛成しない株主がいれば、責任を免除するのは妥当ではないということです。
事務局S なるほど。監査役は、役員の責任を減免することができないのですか?
今 津 とても良い指摘ですね。監査役は、取締役等の業務が法令や定款に反していないか、著しく不当でないかを調査し、報告することですので、役員の責任を減免する役割は持っていません。ですが、監査役のいる株式会社が、取締役の責任の免除に関する議案を株主総会に提出する場合には、監査役の同意が必要です。
事務局S 監査役はそういう役割も持っていると直感していました!
今 津 また、定款に定めがある場合には(要登記)、例外はありますが、取締役会の決議によって、役員の故意または重過失を除く任務懈怠責任を、一定の範囲で免除することもできます。また、株式会社は、業務執行取締役等を除く役員との間で役員の責任を限定する責任限定契約を締結することができる制度もあります。
事務局S 色々な制度があり、段階的にすることで、取締役が働きやすいようにしているのですね。
今 津 そうですね。役員の責任が大きすぎて、役員へのなり手がいなくなると困りますので、会社法としても、役員の責任を段階的に制限する制度を設けているということですね。
事務局S 役員の会社に対する責任に関連して、弁護士にはどのような役割があるのですか?
今 津 弁護士は、例えば、責任が重すぎて役員のなり手がいないことにならないよう、企業と相談しながら、企業が制度を設計することのお手伝いをさせて頂きます。
事務局Sなるほど。
今 津 また、役員の行為により会社に損害が発生したと思われる場合に、責任を追及すべきかどうかについても、検討させて頂きます。
事務局S はい。
今 津 さらに、企業が役員や元役員に対して責任を追及することとなった場合に、企業の代理人として、損害賠償の請求をしたり、または役員の代理人として防御をしたりします。
事務局S トラブルが発生する前の段階から、トラブルが発生した後の段階まで、弁護士が関与する場面があるのですね。
今 津 そうですね。日常的にご相談いただくことによって、企業の更なるご発展のお手伝いをさせて頂くことが、我々の喜びです。(次回に続きます。)