種類株式について(5)
事務局の立場から、前回に引き続き、種類株式についてご紹介します。
種類株式は、前回までにご紹介した活用方法以外にも、次のような活用方法が考えられます。
1 事業承継
株主が複数人存在する株式会社のオーナー株主が後継者に当該会社を承継させたい場合、経営に参加しない一般株主に対し、議決権を制限する代わりに配当を優先的に行う内容を定めた種類株式を発行し、後継者にのみ議決権のある株式を与える方法が考えられます。
2 危機管理
閉鎖的な株式会社が資金調達の必要に迫られて外部の出資者に出資を求める場合、既存の株主と当該出資者との間で争いが生じた場合に備え、当該出資者に対し、配当を優先的に行う内容を定めた全部取得条項付株式を発行する方法が考えられます。この場合、既存の株主が株主総会において特別決議をすることができる数の議決権を保有していることが前提となります。
既存の株主と当該出資者との間で争いが生じた場合、既存の株主は、全部取得条項付株式を取得する株主総会の特別決議をすることにより、当該出資者を株主から締め出すことが可能となります。
3 合併会社
株式会社2社が合併会社を設立する場合、出資比率が少ない会社は、通常、株主総会での普通決議が必要な取締役を選任することができません。そこで、株主間契約で合意した数の取締役を出資比率が少ない会社が選任できるように保証するために、出資比率が少ない会社に対して、一定数の取締役の取締役・監査役選任権付株式を付与する方法が考えられます。