事務局から弁護士へ質問(10)-取締役の株主に対する責任?
前回は、MRPやD&O保険という保険のお話から、取締役や監査役も訴訟に巻き込まれる可能性があることを知りました。取締役が会社や取引先から責任を追及される場合について聞いたので、今回は、取締役が株主から責任を追及される場合について聞いてみました。
事務局S では、取締役が、②株主から責任を追及される場合はどのような状況が考えられますか。
今 津 先ほどの例(企業はどのような時に、弁護士へ依頼する?(9))で、Y社が、X社に対して、巨額の賠償金を支払ったために、Y社が損害を被りました。Y社の株主は、一定の要件を満たしたうえで、株主代表訴訟により、Y社の取締役の責任を追及することが考えられます。
事務局S うーん。取締役は責任重大ですね。株主が大きな力を有しているというのは、前回聞いた通りなのですね。ほとんどの企業には取締役がいると思いますが、企業において取締役はどんな責任を負っているのですか。
今 津 取締役は、会社に対して善良な管理者としての注意義務および忠実義務を負っています。他の取締役を監視する義務もあります。ですので、偽装が行われないように、また仮に偽装が行われた場合であっても発見することができるような会社の環境を作り上げる必要があります。
事務局S 大企業であればあるほど、現場の状況を把握したり、環境を作り上げたりすることは簡単ではありませんね。
今 津 そのとおりですね。紛争となった後だけではなく、そういった環境づくりや、どこまでのことをすべきかといったことにも、ぜひ弁護士へご質問して頂いて、法律事務所を利用して頂ければと思います。
事務局S 日頃の小さい問題点をそのまま放置せずに、弁護士へ相談することが大事なのですね。
取締役に任期はあるのですか。
今 津 会社法では原則2年ですが、短縮することができます。
事務局S 取締役として2年間の任期を無事終えれば、たとえのちに問題が起きたとしても、責任は間逃れるのですか。
今 津 取締役を退任したら責任もなくなるというわけではなく、時効期間が経過するまで責任は存続します。時効期間は、権利を行使することができる時から10年間です。(平成29年民法改正により、行使することができる時から10年、権利を行使することができることを知った時から5年に修正されます。)
事務局S そうなのですね。取締役のように重役が知らないところで、裁判になるような問題が発生して、責任だけは取締役だけがとるというのは、なんだか気が重いですね。
今 津 法律は不可能を求めるものではありませんので、取締役がそういった問題を防止することができることが前提です。そうはいっても、取締役も人間ですから、すべきことをしなかったといったことが原因で、意図せず損害賠償責任を負わされてしまうということは起こり得ます。
事務局S そうなんですね…。(次回に続きます。)